ミスター「つま先蹴り」新垣安吉

シュリ

2012年02月15日 16:41

わが松林流の初代宗家である長嶺将真先生には、空手道習得において師事した方は数名いらっしゃいます。
新垣安吉(あらかき あんきち)先生が、その一人です。
実質的には最初の師とも言えるようです。


新垣先生は首里手の祖、松村宗棍から首里手を継承した喜屋武朝徳・知花朝信の
弟子にあたります。
長嶺宗家の本によると、家業が栄えており裕福だった先生は、そのおかげで空手に
打ち込む機会を家から与えられていたので、それこそ朝から晩まで修行していたそうです。
暇さえあれば裏山に出かけ、修行、修行、修行・・・
足腰を強くし足技に磨きをかけるため、裸足でつま先立ちで野山を走り回っていたり
したようで。だから、新垣先生のつま先蹴りは恐ろしい破壊力を獲得したとか。。

こんなエピソードがあります。
ある時友人と酒を飲んでいた新垣先生が、店内で酔っぱらいにからまれ、よくわからない
因縁をつけてきました。
そしたらいきなり突き飛ばされ、先生は階段をゴロゴロ転げ落ちてしまったそうです。
でもまだ収まらなかった酔っぱらいは更に向かってきたようで、次の瞬間先生は一瞬のうちに
さっと転身し、相手の脇腹へ前蹴り(つま先蹴り)をお見舞い。当然酔っぱらいは一発でKO。
ここまではいいのですが、なんとその酔っぱらい、そこから体調を崩し、半年後に吐血して
亡くなったそうです。

蹴りを食らったのが直接の原因かどうかは今でも判明していないようですが、
恐ろしい蹴りの持ち主だったと宗家は本で書いていました。
そんな新垣先生も、家業がうまく行かなくなってからは心労がたたったのか、
31歳という若さで胃病が原因で亡くなりました。(1899~1929)

そういう事を色々と経て来た宗家だからこそ、身も心も共に正し、鍛えていく必要性があると
強く思われたのではないでしょうか。
私たちは、想像以上に心と身体が密接に結びついていて、どちらかのバランスを崩せば
おのずともう一方のバランスも崩れてしまいやすくなるもの。


「心身を鍛える」大切さは、どちらかを崩した事がある人はリアルに感じるでしょうね。


新垣安吉先生近影

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